長坂町 「カフェピアニッシモ」経営 畑山満利子さん

結婚を機に移住

信州の小諸で暮らしていた畑山さんが八ヶ岳にやってきたのは、2007年のこと。
パートナーと結婚し、長坂町で新たな生活を始めるためだった。ところが移住直後にパートナーの病気が発覚し、10ヶ月後に亡くなってしまうという悲しい出来事が。ショックのあまり、畑山さんは3年あまりひきこもり状態となり、動けなくなってしまった。しかしその間、自分自身と向き合うことができて、これからの人生をどう生きていこうか、冷静に考えることができた。

「若い頃、カフェをやりたいという夢があったことを思い出したんです。しかも単なる飲食サービスではなく、人が癒される空間作りをしたかった。そんな夢があったのに、できない理由を探してやらなかった。今やらなければ後悔すると、カフェ経営を決めました」

辛苦をバネに一念発起。その真摯な思いが周囲の人たちに伝わったのか、話はトントン拍子に進んだ。とりわけ肝心の店舗の物件探しは、亡き夫の面倒を見てくれた訪問介護士さんの「ちょうど店舗があいた、いい賃貸物件があるのよ」という情報だった。
木立のなかの木の一軒家カフェは、思い描いていたものに近く、前オーナーから引き継ぐことで、すぐに商談成立。まさに出会うべくして出会ったお店だった。こうして2011年7月、娘さんの協力を得て、長坂町の白井沢にカフェオープンの運びとなったのだ。

走りだしたら止まらない

夏の繁忙期にスタートしたため、走り出したら止まらず、当初は息をつく間もないほどの忙しさだった。じょじょに定番メニューもでき週1回の休みを2回にしたりと、軌道に乗ってきた。オープンから5年あまり、ようやく自分たちのリズムができ、時間の余裕を持てるようになった。
休みの日は佐久や甲府まで足を伸ばして、本屋さんのカフェで思い切り読書にひたったり、映画を見たり。またきれい好きの畑山さんは、家の掃除も趣味のひとつだとか。
お住まいは長坂町の市営住宅。20平米、3DKの住宅は住み心地よくて気に入っている。「東西に長いベランダが、風通しも日当たりもよくて気持ちいいんです。植物を置いたり、布団を干すのにもちょうどいいし。おススメです」

自然のすばらしさと人とのつながりに魅せられて

思い返せば30代の頃、わざわざ大泉まで野草茶を買いに来たことがあったりして、
「八ヶ岳は素敵なところでいいなと、好きな場所ではあったんです。でも、まさかここに定住するとは思ってもみなかった」。
それまで生活していた小諸も山の町だが、八ヶ岳ほど自然は残っていない。ここには、生まれて初めて目にする昆虫や、住まいやお店のすぐ近くに、鹿やハクビシンなどの動物がいるのが当たり前。動物と共生した自然のなかでの暮らしを、畑山さんは心底から楽しんでいる。
「来たいと思ったら、とにかく来て感じてみることが大事だと思います。自分の感覚を大切にして、心地よければそれでいい。それから、夏だけではなくて冬の体験をしてみることも大事かもしれません」と、移住を考えている人へのアドバイスをいただいた。
夏と冬ではライフスタイルは違ってくる。畑山さんの場合も、繁忙期の夏は夜10時過ぎまでお店を離れられないが、逆に冬は夕方には家に帰り、家でお店のお料理の仕込みをするなど、季節に応じた生活スタイルがあるという。
また、人とのつながりの大切さも痛感している。ヨガや太極拳の先生、雑貨や服作りのアーチスト……八ヶ岳には、なぜか自分の世界を持った人たちが集まってくる。そんな個性的な人たちとのかかわりが、また新たな世界を広げてくれるのだ。

長坂町 「カフェピアニッシモ」経営 鷹野麻衣子さん

お母さんのサポート役で移住

お母さんが八ヶ岳に移住したのをきっかけに、信州の上田でIT企業のOL生活を送っていた鷹野さんも、八ヶ岳と上田を行き来するようになった。その後、二人でカフェを始めることになり、2011年、仕事をやめて定住することに。
「自分の意志というよりも、母についてきて、いつの間に、八ヶ岳に移住していました。やはりこの地に魅力があるので、自然の流れで“来させられた”といったらいいかもしれませんね」

好きなことをやってきた

大学時代の専門は建築で、もともと住宅や暮らし、飲食に関することに興味があった。だからOL生活からカフェ経営への転身も、すんなりと受け入れられた。自分の興味の範囲内なので、喜んでお母さんに協力しようと腹が決まったのだ。とはいうものの、「二人ともカフェの仕事は未経験で始めたので、無我夢中でした。お店の照明も自分たちでつけかえたり、内装など何でもやりました」

自然の流れに身を任せて

OL時代は忙しくて自分の時間が持てず、八ヶ岳では自分の暮らしを大事にしたいと思っていたが、最初はそうもいかなかった。しかし無我夢中で頑張ったおかげで、今は充実した毎日を送っている。
週2日のお休みのうち、1日はフリーペーパーの仕事を手伝い、もう一日は読書に浸ったり、お母さんと映画を見に行ったり、アクティブに使っている。
料理、インテリア、建築などの本を読みながら、新しいメニューやインテリアを考えるなど、当然ながらカフェのことは常に頭から離れないが、それがまた楽しい。今は米粉を使ったお料理の研究にのめりこんでいる。
「母をサポートしながら仕事も楽しくやってきて、今の生活は心地よく、安定しています。でもこれから結婚もしたいし、子供も欲しい。だからあまり先のことまできちっと決めないで、成り行きに任せています。きっといい方へ流れていくと、前向きに考えています。」
これまでも建築やITなど、自分の好きな仕事に取り組んできた。目の前のことを一つ一つこなしながら自然の流れに身を任せていけば、いい方に進んでいくことを体感してきた。
八ヶ岳の一番の魅力は、四季折々に表情を変える景色のすばらしさだと鷹野さんはいう。春の芽吹きと新緑のまぶしさ。夏は涼風を感じながら、外のテラスでごはんを食べる楽しさ。秋の紅葉、冬枯れの風景や雪景色の美しさ。街中では決して感じることのできない自然の力に、鷹野さん自身も癒されているのだろう。

カフェ ピアニッシモ
408-0033 山梨県北杜市長坂町白井沢4050-2

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